特殊舵
マリナーシリングラダー
シリングラダーの高まる需要
高さ・幅・上下端板・魚型水平断面を最適設計、舵角の範囲は従来の2倍、左右に70度に拡大
シリングラダーは、その断面形状が魚を横から見たような独特の形をした舵です。船舶の操縦性、保針性を著しく高めながら、推進性能をほとんど損なうことがなく、すでに日本の造船所において3,000隻以上の船に搭載されるという高い評価を確立。
安全面・経済面で大きく寄与しています。
また、最近では大型肥大船の操縦性が問題となり、シリングラダーの重要度はますます高まるばかりです。
マリナーシリングラダーの開発
大型船や高速船では、吊舵形式とすると舵軸が太くなることから、かねてよりマリナー型のシリングラダーの開発が求められていました。
当社では、平成5・6年度にかけて(財)シップ・アンド・オーシャン財団の援助を得て、性能や構造に検討を加えた「マリナーシリングラダー」の開発に成功。
高速コンテナー船(188m、24kts)やRO/RO船、防衛庁向け補給船、145,000m3LNG船などに採用され、運航実績においても良好な成果を得ております。
特性とその効果
「マリナーシリングラダー」とは、マリナー型の舵の可動部分をシリングラダーの断面形状にしたものです。
いわば舵ホーン付きのシリングラダーだとお考えください。
(下図:「マリナー シリングラダー」の断面形状を、マリナー舵と比較しています。)
マリナーシリングラダー
普通マリナー舵
普通のマリナー型の舵に比べて揚力係数が格段に大きく、同時に転舵時の抗力係数も大きいため、操縦面で優れた効果を発揮します。
一方、直進時の舵角ゼロ近辺における抵抗係数にはほとんど差がありません。
シリングラダーの場合と同様に、プロペラ後流を受ける寸法があれば十分なため、普通のマリナー型の舵に比べて舵面積を小さくすることが可能になりました。また、サイズダウンを実現しながら操縦性能、保針性能、追従性能を著しく向上させています。
4mの自航模型船による試験
[大阪大学]
- モデルの要目
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項目 マリナーシリングラダー 普通マリナー舵 船体要目 L×B×D×d(m) 313.0×56.6×28.6×19.6 船速(kt) 14 プロペラ φ9.35m×1(FPP) 舵 寸法(m) 10.0×7.0 13.8×9.2 舵角 2×70° 2×35°
- 旋回試験
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「マリナーシリングラダー」は普通マリナー舵に比べて、旋回性能が非常に優れており、特に舵角65°での旋回では極端に良い性能を示しました。
定常旋回の軌跡 マリナーシリングラダー 普通マリナー舵
- Z試験
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10°および20°Z試験のいずれにおいても、「マリナーシリングラダー」は普通マリナー舵よりもオーバーシュートアングルが小さく、針路安定性に優れていることが判明しました。
左10°Z試験 右20°Z試験
舵単独試験(風洞テスト)
[大阪大学]
「マリナーシリングラダー」は普通マリナー舵に比べて、揚力係数、抗力係数ともに極めて大きい値を示しました。
- 揚抗力係数
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揚抗力係数
大型模型船(7.2m)による
抵抗・自航試験
[明石船型試験所]
推進所要馬力は表の数値結果となり、「マリナーシリングラダー」を採用した場合でも、普通マリナー舵よりも推進所要馬力が小さくなるという結果が出ました。
- 推進所要馬力の抜粋
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舵の種類 マリナーシリングラダー 普通マリナー舵 船速 13kt 15,365BHP 15,660BHP 14kt 19,560 19,790 15kt 24,654 24,975
マリナーシリングラダーの実船搭載例
コンテナー運搬船「WANHAI 301」
- WAH HAI LINES LTD.所有
内海造船(株)瀬戸田工場建造 - 全長188.0m
- 常用速力21.5kt